【映画】アメリカン・ビューティー American Beauty 感想


アメリカン・ビューティー [DVD]

アカデミー賞作品「アメリカン・ビューティー」をでんこ嬢と鑑賞しました。ちなみに私は2回め。でんこ嬢には「国民性違うから無理かもー」なんて、軽くフェイクかましてあげました。

――鑑賞後、ポロポロ涙してましたよ……ハマったみたい。

以下、座談レビューです。いつも通り長文エントリになりますのであしからず。


yukkie: アメリカンビューティー(American Beauty) どうだったー?
でんこ: いやー だいぶ落ち着いてきましたがyukkieさんどうでしたー
yukkie: だいぶツボにハマったようだったねー。
でんこ: まさか「あの」アメリカン・ビューティで涙まみれになるとは思わなかったー。
yukkie: どんな作品だと予想していたのかしらないけど、いい意味で大きく裏切られた、と?
でんこ: 「あの」というのは、周囲の声で 何というかこう…「黒い」「シュミ悪い」「日本人には理解出来ない」っていうイメージができてたから
yukkie:ふははは。まー私もそう吹き込んでいたわけだけど^^
でんこ: 確かに「黒い」… わけだけど、上質な黒さというか何と言うか。
yukkie: うーん、黒いというか、日本人のモラルや倫理感ってのに触れるから拒絶されるところがあるのは否めないね。
でんこ: マジメに考えると かーなーり重くなっちゃう悲劇を、微笑ましい悲劇にするあたりは「トゥルーマンショー」に似てるとこがあるのかも。
yukkie: まぁ、今でこそ認知されているものの昔のビートたけしの発言に眉をしかめる人が多かったのと同じような感じ?
でんこ: うーーーーーーん。そうかな。 まぁしかし、ある意味人生賛歌みたいな。タイヘンだけれど、やっぱ人間ってイイネー みたいなのが感じられるとこが この映画のいい所だと思ったよー
yukkie: まぁこのメッセの前にも話したけどもシナリオや演出を見るというより、作品の背景に広がる人生観を観る映画だったか、と。
でんこ: うん、背景を見る(感じる)映画なんだろうね。 モラルとか表面的な所でガードして見たら勿体無い
yukkie: 皮肉なことに、いろいろ悟ったところで人生の幕がおりてしまうわけだけどネ。
yukkie: なんというか悪化するファクターも確かにあるんだろうけど、微妙なタイミングのズレや勘違いで修復可能にも不可能にもなるというのが、個人的にはこめられたメッセージの「1つ」として強く感じられたかなー。
でんこ: ほうほう… そこは気づかなかった。そうだね、そんな風にも感じられるかな
yukkie: ダメなほうへ進行しているのがわかっているのに、それを受け入れていくってのが、ひとつキーになってるような気が。
yukkie: 「受容」や「諦念」ってのに近いかな…。
でんこ: うむ……うんと、「ダメ」な方というより世間一般で考えられる「シアワセ」から外れた方向って感じかな。
yukkie: ん、ダメってのは――
yukkie: あくまで、この映画内の事件が、メディアなどには「家庭崩壊?やその他もろもろで殺人」って見出しで出るってストーリー進行のことで精神的なものではないってことで。
yukkie: 「世間一般のしあわせ」ってのは抽象的だなぁ。
でんこ: お金持ちとか家族円満とか社会的地位とか。「成功した」状態ってやつ
yukkie: うーん、私の中では――
地位・名誉などの社会的地位や財産=幸せってことじゃないのは、すでに大前提としてあるからなぁ……。だから「一般的な幸せ」というのはあまり意識しなかったかも。

yukkie:
うーむ、そこいらちょっと2人の考えに差があるかもしれないというのはおいといて――
yukkie: 個人的には、「あ、悟った。勝ちだなー」と最後に思ったわけ。
でんこ: 悟った、というか感じた、というか。まだ悟りには到達してないと思うけれど彼なりの幸せをその瞬間、掴んでいたという状態かしら。
yukkie: 悟るは「理解」じゃなくて「受容する」って意味で。仏教で言う「解脱」に近いのかも……。
でんこ: うーーん、解脱ほどまだ安定はしてなかったと思うよ~。

 ここで少し「悟り」って何なのかって話にそれていく(笑)

yukkie: 「悟る」ってのはかなり抽象的な言葉だけども、個人的には「吾の心の内面で事象を無為自然なものとする」ことだと思うわけで、
でんこ: 私的には「悟り」=ある一定の到達段階 なので。一度悟ったら その事についてはもう心が揺らがない段階
yukkie: あくまで外に対して理解するのではなく内面なんだyよなー、と。
でんこ: 彼の場合、もしも人生が続いてたら やっぱりイロイロ悩んだりぐらついたりするだろうから「悟り」という恒常的な状態では無いんじゃないかなー。
yukkie: 到達という高さや距離って測られるものではなくて――
yukkie: 色の違う水(わだかまりとかいろいろ雑念とか摩擦とか)が、全体になじむような感じ?
yukkie: 一と全が区別されない状態って感じかなー。この場合はある事象に限定されるけど。でも、森羅万象を悟ることは人間の業じゃないとも思う(ってことを理解するのも悟りなんだろうけど……)
でんこ: とりあえず悟る論議はまた今度にしようーー
yukkie: うむ、なかなか奥が深いからねー。

yukkie: 閑話休題。
yukkie: それではこの作品で巧いなぁと思ったところを。
yukkie: どうぞ。
でんこ: おーー
でんこ: 「巧い」と感じたのは、ぶっちゃけ全部なんだよねー。
yukkie: まー、よさってのは「まず体感する」ものだから、それもそうなんだけどネ
でんこ: 特にシナリオ。
yukkie: うーん、シナリオかー。
でんこ: 明るくテンポ良く、で話を進めて、モラルから逸脱した話題を、嫌悪感がなるべく出ないように料理してるところとか
yukkie: モラルに関しては、人によって(主に年齢?)の基準があるからなんともいえないんだけど--まぁ2・30代にとっては、そんなに引っかかるところはなかったと思うかな……
yukkie: んで前半を軽く飛ばして笑いをふくめるところなんかは――
yukkie: Life is Beautiful(ビューティフル)とかMarena(マレーナ)のようなイタリア映画で、よく使われる手法かなーと。そのぶん、あとのまじめな部分がすごく色濃く浮き出てくる。
でんこ: シナリオがきっちり入っていて、見る側に分かり易く、キレイに話を繋げるところとか、1つ1つの流れに無理・無駄が無かった
yukkie: うんうん。端折りも冗長なシーンもなく、セリフもアイテムもキャラもすごく最大限に効果をあげているよねー。
でんこ: そうそう。効果的!!

yukkie: もう他にはないですかの?
でんこ: そういった頭で感じる「巧さ」も沢山ありましたな~。シナリオの流れで言うと、最初の主人公の独白で「1年後に死ぬ」宣言してるとこも良かった
yukkie: ふむふむ
でんこ: サスペンス風になって、父親を殺してーというセリフとか拳銃とかの怪しいアイテムにもドキドキして見てたし、何より結末が受け入れ易くなったし。某ペイフ○ワードみたいに「感動的に〆るために、主役を殺してみたんじゃないかな~」と邪推することもなくなるし。

<ここで実対談>

yukkie: で、最初に死ぬことを告知したのはご都合主義のシナリオのシメを防ぐというほかに、主人公が死ぬというショックに対する緩衝でもあり、作品への理解をしやすくするためでもないだろうか、と。
でんこ: 「死」の衝撃を和らげることで、最後の微笑みに込められた意味が、ズガーーーーーーンと観てるこちらの心に直撃
するわけで。うーん、あの死に顔を思い出すと 1時間経った今でも涙が。
yukkie: いきなり死んでしまったら、かなり純文学的(いやとてもいい作品なのだが)になってしまって、マジョリティの評価を得るところまではなかなかいかなかったかもしれない(インディベンデント映画っぽいってことかjなー)。
でんこ: それを考えると、心で観るべきラストの部分が、「死の衝撃」が大きくなっちゃうもんね。今回の冒頭の「死の宣言」のバクチは、大当たりだったなーと思うなぁ
yukkie: ですねー。

yukkie: 私が感じたことといえば――
yukkie: まずは登場人物の名前が覚えにくいという演出(たぶん)。他の作品でそうしているように名前の連呼があまりなくて、あったとしてもすごく日常的に使われているんだよねー。
でんこ: 「よくある話」的な感じになりますなー
yukkie: ここいらがすごく「一般的にありそうな感」が。キャラの色づけがすごくしっかりしていることもあって、見る側としては「解雇された父」「不動産の母」(←ちょっとイイカゲンだなぁ)みたいなのがね。
でんこ: そうそう。キャラの描き方が巧いと思った。 俳優の演技もあるけど、かなりアクの強い設定ぶりで場面がくるくる変わるんだけれど、すんなり頭に入ってくると。
yukkie: それが特殊ながらも「名前」より印象が強いってことから、世間にありそうな感じがするわけ。
でんこ: 名前じゃなくて、世間で与えられた役割・立場 で覚えるわけね
yukkie: そそ。

yukkie: あと巧いなぁと思ったのが青年。
でんこ: うんうんうんうんうん。 凄く良かったーーー!
yukkie: 彼はすごいぞ……たとえば――
でんこ: おー
yukkie: やっぱりビニル袋の映像のあたりでうかがえる感受性の強さ? それゆえに、すごい理性をもって仮面を分厚く被って、普段はそれを隠す(護って)いるってところ。
でんこ: だよね。表題の「beauty」という言葉も彼の口から語られてるわけだし。
yukkie: 巷間で言われる「馬鹿と天才は――」にある意味通じるものがあったような。 「純粋でいるために汚れをしる」ってほうが適切か・・・???
でんこ: だなぁ… 内面のカミソリの刃を、いかに(必要な時以外は)しまっておけるかどうかの差ね
yukkie: あとは――
でんこ: 最初は変人
yukkie: シナリオの流れをおさえていたタイムキーパー的なところ。ゲイ疑惑で父親に「かわいそうな父さん」といったときに 「うわー、ラストに向かって動き出したー!」と鳥肌立ったーね。
でんこ: むがー、そこは気づかなかったわ!
yukkie: 彼にはあくまで現実?が見えていたんだなーと。で最後のシーンで見ているところまでつながるわけ。
でんこ: 凄く印象的なキャラだったけれど、タイムキーパーでもあったのね。これは見返さないと!
でんこ: 私的には「ハトの死骸」・「ホームレスの死体の話」を経て、最後に主人公の顔を見たときの青年の共感したような微笑がすっごく良かった――
yukkie: 美しいものを彼は見たんだろうねぇ……。
でんこ: うんうん。 主人公の顔だけでもアレなのに… 彼の微笑みのせいでもうもう目から鼻水が―――。
yukkie: それは幸せを感じながら死んだ主人公の顔だったわけだ。

yukkie: で、もう1つふれておきたいのはーー
でんこ: おうさー
yukkie: 「赤」の演出かな。全編を通して赤がカラーになっているわけだけど。
でんこ: バラの赤・玄関の赤……。ラストのどしゃぶり雨の中の扉も印象的だったなー。あ、最後の血も鮮やかな赤!!! だったねー
yukkie: で、この演出がすごいと思ったのが 「赤」というこの一色に、ここまでいろいろな意味を込められるのか!ということ。
でんこ: んー。そこまで見れてなかった。yukkieさんは2回目だっけ?
yukkie: 1回目から思ったぞー
でんこ: ここで思い出してみると……ええっと。えっちい赤(バラ)
yukkie: 薔薇の花びらは妄想で――
yukkie: 庭の薔薇は体裁とかそんな感じ――
yukkie: クルマの赤は「憧れ」、でもかなり物的な一過性。
でんこ: 上質を知る赤(妻のバラ)、小宇宙の赤(家の扉)
yukkie: 最後の扉は「答に収束していく赤」
yukkie: 最後の血の赤は「人としての赤」??
でんこ: かっこいいな…扉のは「妻が見た赤色」だから、ちょっと違和感があるけれど
yukkie: あれは妻の視点ってのは便宜的なもので、開けようとしている蓋を観客に見せたかったんだろうなぁと。
でんこ: んでは家族という舞台の赤… むずかしわー
yukkie: ただ、ここで共通しているのはどの赤色にもあまり醜いイメージは帯びさせていなかったことかな。
yukkie: まぁそんなところです。
でんこ: 醜いイメージを背負わせても良かったと思うけれど。強いて言うなら庭の赤かな~。体裁とか拘束とか。
yukkie: 体裁とかのも外見的にはキレイなものってことで^^。嫉妬とか怒りってカラーじゃなかったんだってことで。

yukkie: ちょっと物足りなかったのは母親とお友達の書き込みなんだけど、時間とかを考えるともうこれはほんと仕方ないかな、と。。
でんこ: だねー。でも母親にはめっちゃ共感出来たよ~。濃い描き方してるからOKかなと
yukkie: うむうむ。
でんこ: 友達は……カッコつけたいお年頃、って感じで実はカワイイところもあったのね~という最後の告白に頷けたかな。
yukkie: 非常にいい作品でしたな。

yukkie: 最後に述べておくとすれば結構意訳が多かったので、何回めかはそこいらも聞くとおもしろいかも。
でんこ: ほうほう。 3回目ぐらいは英語翻訳で観てみるよ~

でんこ: んじゃ最後に点数かな
yukkie: 10点でいえばーー
でんこ: 文句無く9! 10に近い9! 9.7!!(見返したら10になるかも知れない…
yukkie: 同じくらいで9つ半で。歳をとっても観れる作品じゃないかなー。。
でんこ: 中年層にも受けがいいみたいですぞ? 丁寧で計算された作りで、しかも笑える悲劇ときたら高得点だー! 

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